- 2023年2月6日
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脱炭素社会に向けて注目される建築物の木造化・木質化への取り組み。
SDGs、カーボンニュートラル、ESG投資などへの流れを受けて、各方面で注目を浴びています。
非住宅建築の木造化は木材の使用量が多くなることから、CO2固定化による環境保全や山林活力の復活など地域・産業の持続性のためには有効な手段です。
社会的な要請の高まりや法規制の緩和などもあり、「木造ビル」などの事例も増えつつあります。
しかしながら、実態としては「木造非住宅」が期待ほど増えていません。
その理由の一つが、「建築実務者が木造未経験」だからです。
「建築のプロ=木造のプロ」ではありません。
木造のプロが少ないことが、特に低層・中層の建築物の木造化にとって大きな課題です。
このコラムでは、「建築実務者が木造未経験」であることについて解説します。
非住宅用途の木造化普及への課題
非住宅建築の主要構造部を木造とするには、計画や設計、施工に関してさまざまな課題があります。
主な課題は下記です。
- 非住宅建築の木造化および木材の使用促進については、建築主側の要望が強いことが明確になっており、材料および建築の木造化について認知度の向上が重要であることは明確です。
- 非住宅建築物は比較的大規模であり、構造的に複雑になる場合が多く、特に構造設計分野において実績と構造設計スキルを有する設計者との協働が必要になります。
- 事業主体と材料供給及び設計〜施工者側の取り組みおよび意識に差違が生じている傾向があり、それらの改善により非住宅建築物の木造化が促進する可能性があることも予想されます。
- 大スパンに対応する工法の提案、コストダウンや設計方法などの技術的なサポートも必要です。
CLT構法による建築の取り組みが求められるなど、 木造に対する社会的要請はますます大きくなってきています。
木造非住宅に関する建築教育、設計事務所、施工会社の実態
中大規模木造に取り組む設計者や施工者の育成、普及を拡大する上では、いろいろな障壁があります。
RC造やS造をやってきた人が、木造に取り組もうとしたときに頼れる情報が限定的です。
木造建築のトップランナーの本を読んだからといって、いきなり中大規模木造に取り組むことはできません。
既に出版されている木造の本は、「木造ってこうなんだ」という基礎的な部分が書かれていることが多いです。
RC造やS造については勤務先の実務の中で学んだ人が多いと思われますが、木造については実務でも本でも、木造を学ぶ術がないのが実情です。
工法が普及する仕組みについての問題意識も顕在化しています。
2000年に建築基準法が改正され、2010年くらいから木造で非住宅、低層、中層と取り組みが進んできました。
つまり中大規模木造については、建築業界においても本格的に「木造非住宅」に取り組んだ期間が10年くらいしかないのが実態なのです。
建築教育、設計事務所、施工会社の実態もあります。
<建築教育の実態>
木造をちゃんと教えるという体系が整備されないまま、現在に至っているのが実情です。
今世紀になって木造はものすごく進化しています。
木質材料もいろいろな種類がつくられ、いろいろな新しい工法も生まれています。
そうした情報を学べる、「普通につくられている木造について知る」教科書が存在しないのです。
現代の木造を教えられる教科書をつくることが求められています。
<設計事務所の実態>
本来は実務をやりながら学ばないといけないのですが、設計事務所でも木造非住宅の実績がある会社は限定的です。
その結果、木造に取り組みたい人が設計事務所に入所して、実務を学んで1人前になっていくことが難しい状況です。
木造を経験したことのない人が、木造で設計できないかというと、そんなことはありません。
優秀な構造設計者などの協力は必要ですが、多分2〜3件の木造を手掛ければできるようになると思われます。
一度だけ木造に取り組んだけれども結構大変だったね、もうやめておこうと、立ち止まってしまう人が多いのも事実です。
2〜3件経験してみて、ある程度何となく理解できた人たちが各設計事務所に2〜3人ずついるという体制をどれだけ早くつくれるかが鍵になります。
そうなれば、設計の現場で先輩から教わることも可能になります。
<施工会社の実態>
木造の非住宅建築を手掛けようとする工務店は増えています。
もともとの成り立ちは工務店でも、事業領域が広がってS造やRC造を手掛けるようになったゼネコン系工務店は、規模の大きなプロジェクトの施工計画作成も含めて比較的参入しやすいです。
技術力のある工務店も実は参入しやすいです。
標準化を進めて住宅の数をこなすのではなく、どう建てようかと考えたり、新しい技術を意欲的に研究したがったりする工務店が多いからです。
規模が大きいと初めての工務店には経営的なハードルが高くなりますが、延べ面積500m2以下(もしくは工事費が2億円以下)くらいであれば地域の工務店でも対応できる可能性は広がります。
工務店は求められる建築の規模によって、設計・施工、元請け、ゼネコンの下請けなど、さまざまなケースがあります。
課題として、規模が大きくなれば、今まで一般建設業の許可で問題なかったとしても、特定建設業が必要になります。
下請けで入るのであれば、企業と取引するために、会社の体制もしっかりと整備しなければなりません。
一方で、現状は設計者の多くが木の性質を知らないまま設計することが少なくないので、木材を知るコーディネーターとしての役割も工務店(建設会社)は担う必要があります。
まとめ
「建築実務者が木造未経験」であることは事実です。
一方で建築実務者向けに木造非住宅実現を支援する仕組みもあります。
今、求められているのは、「建築実務者が木造に積極的に取り組む」ことです。
ハウス・ベース株式会社は、施設建築の木造化・木質化を支援するサービスを展開しています。
それが、プロジェクトマネジメント(施設づくりの発注者支援)です。
施設建築に求められる設計者選定・施工者選定・コスト・スケジュール管理にいたるまでをトータルにサポートします。
■施設計画の策定
建築主のニーズに応じて、最適な施設の計画を専門家チームと共に提案します。
■スケジュールの設定・管理
事業計画に応じて現実的な工程を設定します。関係者に周知しながらスケジュールを管理します。
■設計事務所の選定
施設建築ではその用途の設計監理を得意としている設計事務所を建築主と共に選定します。
■施工会社の選定
建設地、工事規模、用途等に応じて、対応できる施工会社を建築主と共に選定します。
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