- 2023年10月20日
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木造非住宅イベント「ティンバライズ様福島ツアー」概要
先日、木造化・木質化関連の学びを深めるために、「ティンバライズ(福島ツアー)」に参加しました。
そのイベントレポートを「後編」をお伝えします。
前編はこちらです。
木造非住宅「ティンバライズ様福島ツアー」:藤寿産業様視察
藤寿産業株式会社様の特徴は下記です。(出典:藤寿産業株式会社WEBサイトより抜粋)
◾️物件対応型の特殊材への高品質かつ柔軟な対応力
- 長年に渡る多数の納入・施工実績ゆえの柔軟な対応力
- 東日本屈指の大規模工場による安定した品質での生産体制
- 設計~製造~加工~施工完了までトータルでの支援を実施
◾️超大断面材・湾曲材への製造・加工能力
- 国内最大級の全自動加工機、二次接着メガプレスを導入
- 長さ16mまでの超大断面材及び湾曲材の製造・加工が可能
- ハイテク設備に長年培ってきた職人技を融合した幅広い加工能力
◾️新技術、新工法、新製品への高い技術と連携体制
- 耐火集成材の性能評価試験合格、国土交通大臣認定取得
- 大手ゼネコン、大手企業との製造連携やライセンス契約締結
- 新工法、新製品について共同研究会を結成し、技術連携
藤寿産業様といえば、話題の木造建築があります。
「大阪・関西万博」の木造ゲートです。
この木の構造躯体(柱・梁)の加工を藤寿産業様が担われています。(3工区のうち、1工区を担当)
構造用集成材で、柱が420mm角、梁せい420mm(梁幅210mm)の大断面です。
仮設建築物とはいえ、全周約2キロの大型木造建築です。
日経クロステックの関連記事はこちらです。
木造建築の大スパン化や中・高層化に対応するべく、接合部の技術なども開発されています。
木造非住宅では耐火建築物への対応が重要となりますので、タイプの異なる耐火集成材に対応できることが強みです。
オリジナルのキャップをかぶって、見学しました。
藤寿産業様の工場内は、諸事情により写真NGでしたので、教えていただいたポイントをテキストのみでお伝えします。
◾️建設会社から木材業への転換
→大工・職人を活かせる(高齢になったら、工場内の仕事であれば天候に関わらず仕事ができる)
◾️中大規模木造施設造りの総合システムメーカー
→幅広い対応ができることが強み
◾️非住宅木造が2011年以降に増えている
→ここ3-5年で急増している
◾️実績
→中大規模木造建築の累計700棟以上
◾️集成材JAS認証工場
→さまざまな加工が可能、特殊部材のプレカットも対応可能
◾️国産材比率が約8割
→ウッドショックの影響もあり、ここ数年で増加傾向
◾️耐火集成材
→木造耐火建築物の実績は40棟以上
◾️高層の木造建築対応
→8階建の木造ビルなども進行中
◾️構造用集成材の加工
→最大で「梁幅400mm×梁せい3m×長さ12m」まで対応可能
◾️集成材の接着剤に関して
→使用環境A、B、Cに対応可能、耐火要件などからレゾルシノールが多い
◾️湾曲材の対応
→鉄板に鉄骨下地を溶接して型をつくり、材を曲げていく、他社から湾曲材のみの依頼も多い
◾️加工機
→「フンデガー」は主に標準的な加工、「ユニチーム」は主に特殊な加工と、役割ごとに整備されている
個人的には、「梁せい3mの加工が可能」がとてもインパクトがありました。
大断面部材や、耐火集成材の加工を間近で見ることができ、とても刺激的でしたw。
藤寿産業様の「対応中物件情報」の一部は、下記より見ることができます。(圧巻です!)
https://toju.co.jp/category/progress
木造非住宅「ティンバライズ様福島ツアー」:福島県農業総合研究センター見学
次に向かったのが「福島県農業総合研究センター」です。
https://www.mhs.co.jp/work/fukushima-agri-center/
まさに「端正な木造建築」でした。
エントランスのキャノピーは、屋根部分が木質化されています。
エントランスホールです。
これぞ「構造デザイン」と呼べるような、圧巻の雰囲気です。
かなりの大空間を、あまり大きくない断面寸法の構造材で構成されています。
木造ではありますが、一部はスチールで補強されています。
会議室です。木質化された内装も美しいです。
外部の構造躯体の経年変化について議論されています。
竣工後、早めに対策をしておくと、その後の耐久性がかなり違うとのことです。
木に関してはトップランナーの皆様なので、話を聞いていると、とても勉強になります。
木造非住宅「ティンバライズ様福島ツアー」:ダイテック様視察
ダイテック株式会社様の特徴は下記です。(出典:ダイテック株式会社WEBサイトより抜粋)
https://www.daitec-wood.co.jp/
◾️無垢大断面製材を使用した構法
・最大9.5m 300×390までのJAS機械等級区分構造用製材を2013年にスギ材で取得。
(協同組合いわき材加工センターにて認定取得)
2017年3月にはヒノキ材も認定取得。
・杉製材による『貫壁工法による高耐力壁』と『かさねすかし梁』を共同開発。
このような歓迎は嬉しいですねw。
到着して、まず昼食をいただきました。
なんとも贅沢な机と椅子ですw。
ダイテック株式会社様の鈴木社長に解説していただきました。
ダイテック株式会社様といえば、「無垢大断面製材品」です。
準耐火構造・構造計算に対応できる「無垢大断面製材品」はとても貴重です。
ダイテック様と技術開発等で協働されている「株式会社木構堂」の渡邉社長もこのツアーに参加されてましたので、技術面について詳しく解説していただきました。
(このツアー、贅沢すぎますねw)
「株式会社木構堂」様は、木造非住宅の構造設計ではとても有名な会社です。
渡邉社長とはバスの席が隣りでしたのでいろいろ教えていただきました。
CLTの実績もかなり増えているそうです。
ダイテック様の工場の建物は、多くが木造で建てられています。
自社の施設兼ショールームにもなります。
大工さんが「円柱」を手加工されていました。
この柱はある店舗に使用されるそうです。
(贅沢なお店ですねw)
木造非住宅「ティンバライズ様福島ツアー」:協同組合いわき材加工センター様視察
協同組合いわき材加工センター(勿来工場)の特徴は下記です。(出典:協同組合いわき材加工センターWEBサイトより抜粋)
http://www.fmokuren.net/jas_nintei/hp/24iwakikakou.html
構造設計は、山田憲明構造設計事務所様です。
オリジナルの耐力壁です。
壁倍率8.9倍とのことです。
耐震性アップのポイントは、ビスの性能向上が大きいそうです。
構造材は、白いアクリル系の塗装です。
大断面の木材を2センチくらい大きくカットしてモルダーで加工して仕上げているそうです。
大断面の加工機です。
専用の機械で加工されており、とても迫力があります。
本日一番?の撮影スポットになりましたw。
製材の大断面の加工です。
大径材は、歩留まり65パーセントくらいだそうです。
木材は全て使用できるように、いろいろ工夫して活用されているそうです。
「最後まで無駄なく使う」がテーマです。
乾燥機です。
構造材で10-14日程度、板材で7-10日程度、乾燥させるそうです。
乾燥後の材料(ヒノキの240角)です。
スギよりヒノキのほうが乾燥は早いそうです。
この段階では含水率が20パーセント前後とのことです。
JAS材の計測器です。
梁長9.5m、梁幅300mm、梁せい450mmまで測定できるそうです。
JAS材の含水率測定器です。
材長に対して、1ミリ単位で含水率を計測できるそうです。
サンプルとして材長7.5mの木材を計測してもらいましたが、7,500断面の含水率を確認できることになります。
(すごいですね!)
JAS材の番号です。
木材というとアナログなイメージもあるかもしれませんが、こうしたデジタル技術が木材の性能を実証しています。
JAS構造材は、まだまだ可能性が広がりますね!
まとめ
ツアーの最後は、JR泉駅で解散です。
ダイテック様から、「帰りの電車で飲んでください」と、一人ひとりに渡されました。
(こうしたお心遣いに本当に感動しました!)
記念にダイテックの鈴木会長・鈴木社長と写真を撮ってもらいましたw。
今回のツアーは、木造化・木質化に関わる人間にとっては必見の内容ばかりで、とても充実したプログラムでした。
企画・運営されているティンバライズ様はさすがです!
また、ご案内いただく各企業様や施設の皆様の、わかりやすい解説と親身な対応も素晴らしいと思いました!
このイベントレポートの前編はこちらです。