「木の国際化 Glocal Timber Studies」に参加
- 2019年2月17日
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「木の国際化 Glocal Timber Studies」に参加
先日、芝浦工業大学建築学部様主催のレクチャーシリーズ「木の国際化 Glocal Timber Studies」が開催されたので、中大規模木造の勉強として参加しました。
会場は、「芝浦工業大学 豊洲キャンパス」です。
実は、私の母校です。私の在学時は、キャンパスが芝浦にありましたので、時代を感じます・・・。
校舎はとても立派です。(大学の中に、エスカレーターがあるなんて・・・)
中大規模木造に関する知見を深めたいと思ってましていろいろ勉強しておりますが、本イベントの中心メンバーである芝浦工大建築学部教授の山代悟先生の話はとても共感できました。
実務で設計をされている建築家としてCLTなど木造に積極的に取り組みつつ、従来のロマンや情緒で木造を語らず、よりリアルに木造(木質構造)を広めていくための取り組みは素晴らしいと思いました!
今回の講師は東京大学大学院教授の腰原幹雄先生と中島工務店の中島創造さんでした。
東京大学の腰原教授のプレゼンテーション
腰原先生の話は「大きい林業と小さい林業」という現代日本の木造をめぐる状況の問題提起でした。
どちらもいろいろな課題がありますが、あえて要約すると、
「小さい林業は、職人マインド(オンリーワン)でビジネスとして成立しにくい」
「大きい林業は、合理的かつ効率的に改革することで、きちんとビジネス化(良い意味で真似しやすくて仕組み化しやすい)できる」
というカタチで大きく括れると思います。
両方のバランス、両方を伸ばす発想が求められていると感じました。
次に、人工林の面積から予測すると、木が使えない時代が到来するという指摘でした。
「伐って、植えて、木材を活用する」循環を作らないと、せっかくの森林資源が活かせないという大問題です。
人工林と建築物の床面積のバランスから考えると、地産地消は成り立たちません。
地産地消ではなく、地産都消(地域の木を都市部の建築に使う)の発想が求められています。
次は、都市で森を考えるという取り組みについてです。
2019年には建築基準法の改正も予定されており、都市部の建築が「木造化」する契機になるのではないかと期待されています。
中層木造の可能性や、中大規模木造用部材寸法の整備、大断面集成材の規格化などの現況について教えていただきました。
中大規模木造を取り巻く状況の中で、住宅用一般流通材の活用による設計・施工は進んでいるが、木を「うまく、早く、安く」使いたい建築側のニーズと、木を適切に供給したい森林側のニーズのミスマッチについても解説がありました。
「日本の木は柔らかい(特にスギのヤング係数は実態は低い)」という前提で、製材と再構成材などを適材適所で使っていくことが、これからより求められると感じました。
木造の問題は、「適材適所で使う」ことに尽きると個人的には思っています。
中島工務店 の中島創造さんのプレゼンテーション
中島工務店様は、岐阜県の工務店さんです。本社は岐阜県と長野県の県境にある、中津川市の加子母(かしも)という町にあります。
中島工務店様は、一般の工務店より事業規模がとても大きく、各地に支店もあり、建築では住宅から社寺建築、公共建築等を手がけ、土木部門もあり、木材に関する事業もおこなっているという「木造が得意なスーパーな建設会社」という印象です。
http://www.npsg.co.jp/
中島さんからは、中島工務店が試みる加子母を起点とした完結型林業という、小さな林業から大きな林業までを横断する木造のあり方を話していただきました。
地元の林業を成り立たせることが、工務店としての目標になっているそうです。
地域の公共建築物でも、木材利用が多いそうです。
社寺建築の実績も数多くあります。
海外のプロジェクトもあります。
地域全てをセット販売している感覚だそうです
これからの課題も問題提起して頂きました。
地域をリュックサックに例えられて、「バッグを下ろす訳にもいかないので、なるべく軽くしたりする努力が必要」という素晴らしいメッセージを聞くことができました。
まとめ
木造の話は、材料、流通、設計、施工などのテーマによって、いろいろな見解があります。日本の場合、将来的には「施工」の問題が相当悩ましく、今までのように大工さんの力量に委ねるかたちでの継続が相当難しくなっていると感じています。まずはそこから考える必要があるかもしれません。
素晴らしいイベントを開催していただいた関係者の皆様、ありがとうございました!