木造非住宅の設計を成功させるためには、住宅とは異なる法規対応や耐火性能の確保など、意匠設計の段階から慎重な検討が欠かせません。
本記事では、企画段階・基本設計・実施設計という三つのプロセスに沿って、設計者や工務店が押さえておきたいポイントと注意点をわかりやすく整理します。
木造非住宅の設計においては、意匠設計と並行して構造設計や防耐火設計の検討が重要です。
たとえば商業施設の場合、不特定多数の利用を想定するため、早い段階で防火区画や耐火構造などの法規要件を確認し、どこまで木造で対応できるかを見極めることが重要です。
また、大空間を実現できる構造種別や、耐火計画が大きなテーマとなり、実施設計では柱・梁の寸法、接合金物、防火扉やシャッターの配置といった詳細を図面や計算書で詰めていきます。
これらの要素はコストや施工性、デザイン性にも直結するため、専門家や木構造メーカーとの連携を強化し、木造非住宅ならではの魅力を最大限に活かしていきましょう。
木造非住宅の企画段階での設計ポイント
木造非住宅の設計を始めるうえで、まず欠かせないのが「企画段階」でのポイント把握です。
ここでは、施設の用途や規模、さらには防耐火仕様が必要かどうかといった法規的要件までを含めて、全体像をしっかりと把握することが重要になります。
なぜなら、非住宅の木造建築は規模や施設の機能によって適用される建築基準法の条文が異なり、ときに鉄骨造やRC造よりも複雑な法規対応を要する場合があるからです。
たとえば、公共施設や商業施設の場合、不特定多数の人が利用するために建築基準法で定める耐火性能や避難安全性など、通常の住宅よりも厳しい基準を満たす必要があります。
さらに、延床面積が大きくなるほど建築基準法における耐火構造や防火区画の扱いも変わってくるため、早い段階でどこまで木造で対応できるかを検討しなければなりません。
企画時点での法規チェックを怠ると、後の基本設計・実施設計で設計変更を余儀なくされ、コストやスケジュールに大きな影響を及ぼすことがあります。
また、用途と規模によっては「どの部材にどの程度の耐火性能が必要なのか」を事前に整理しておくと、設計時の手戻りが少なくなるというメリットがあります。
木造非住宅は、新築の計画であれば土地の形状や周辺環境との調和も考慮すべきです。
既存建物をリノベーションする場合でも、木造化の可否や耐火性能の方法などは早期の検討が必須になります。
企画段階の準備を万全にしておくことが、後々の設計プロセスをスムーズにし、結果的にコストダウンや品質向上にもつながるでしょう。
まずは「どんな用途と規模の木造建築を目指すのか」「法規や構造の条件はどこまで該当するのか」を明確にすることから始めてみてください。
木造非住宅における基本設計での流れ
企画段階で施設の用途・規模・法規要件の大枠を把握したら、次に進むのが「基本設計」です。
基本設計では、建物の配置や平面・立面・断面といったプランを具体化するとともに、構造方式や材料の選定が大きなテーマとなります。
木造非住宅を実現する際には、特に建築基準法に定められた構造基準や耐火性能を満たすために、どの部材をどう使い、どのような接合方法を採用するかが検討の中心となるでしょう。
まず、木造の構造種別としては在来軸組工法や2×4工法、あるいは大規模なスパンを取りやすい木質ラーメン構造など、用途に応じてさまざまな選択肢があります。
商業施設のように大空間が必要な場合は、集成材によるラーメン構造やトラス構造が検討されることが多いです。
一方、保育園や小規模な事務所ビルなどでは在来軸組工法をベースにした構造を選び、コストや施工性とのバランスを図るケースも見られます。
こうした構造種別の選定は、法規や耐火要求だけでなく、利用者にとっての快適性やデザイン面、施工性、そして最終的なコストにも大きく関わってくるため、基本設計の段階で十分な検討が必要です。
また、基本設計の時点では構造計画も行いながら、梁や柱の寸法、接合金物の種類、耐火被覆の方法などを大まかに決めておきます。
非住宅用途では、火災時の安全確保が特に重視されるため、柱や梁などの主要構造部が一定時間火災に耐えられるかどうかが重要な判断材料となります。
具体的には「通常の木材に加えて、燃え止まり層の設計をどのように計算に組み込むか」「防火区画の区切りをどこで設けるか」といった決定が、基本設計の大切なプロセスです。
専門家や木構造メーカーによる支援を受ければ、木造特有の法規対応や構造設計の検討で迷うことを大幅に減らすことができます。
非住宅の木造設計は一般住宅と異なるハードルが多いですが、過去の事例やノウハウに基づいたアドバイスをもらうことで、難しい課題に直面しても早期に解決策を見つけられるメリットがあります。
こうしたサポートを活用することで、基本設計の質が格段に向上し、かつスケジュールの遅延リスクを低減できるでしょう。
木造非住宅における実施設計での確認事項
基本設計で建物の大枠が決まったら、次はより詳細な「実施設計」に移ります。
ここでは、柱・梁のサイズや接合部の補強方法、耐火被覆や防火区画の具体的な仕様などを図面や計算書として確定する作業が中心となります。
非住宅の木造建築では、特に防耐火性能や構造安全性に関する確認事項が多岐にわたるため、基本設計段階よりもさらに入念な法規チェックを行う必要があります。
まず、防耐火性能の面では、建物の各部分で必要とされる耐火時間(30分、45分、1時間など)に対応できる仕様が求められます。
こうした書類は自治体の建築審査機関に提出し、審査を通過して初めて着工可能となるため、実施設計での段階で不備があると大きなスケジュール遅延につながりかねません。
また、防火区画の設定は非住宅の設計において非常に重要です。
大規模な空間の場合、火災時の煙や炎の拡散を食い止めるために、法令で定められた区画ラインで空間を仕切り、防火扉や防火シャッターを設置する必要が生じます。
空間の使いやすさや動線計画と防火区画の配置を両立させることは、実施設計における大きな課題の一つです。
さらに、木造非住宅では構造計算の最終確認も欠かせません。
特に大スパンをとる場合や多層にわたる建物の場合、使用する集成材や金物の強度計算、接合部の耐力検証など、詳細な計算と図面化が必要です。
もし計算で不足が判明すれば梁の断面を大きくする、接合金物の仕様を変更する、といった設計変更が必要になります。
この段階で大きな変更が発生すると、コスト面にも影響が出やすいため、基本設計の精度がものを言う部分でもあります。
専門家や木構造メーカーと連携することで、意匠・構造の双方で詳細な確認を進めることで、施工直前に発覚する不備を最小限に抑えることができます。
ハウス・ベースの設計支援のメリット
「木造非住宅に取り組んでみたいけど、設計面での課題が多すぎて踏み出せない」という声をよく耳にします。
そんなときに頼りになるのが、ハウス・ベースの木造化・木質化支援(設計支援)です。
幅広くカバーする設計支援を活用すれば、初めての非住宅案件でもスムーズに進められるでしょう。
非住宅の木造化には、法規制や耐火性能の確保など、住宅にはない課題が存在します。
ハウス・ベースでは、こうした分野に精通した専門家が設計段階からサポートするため、工務店や建設会社の負担を大幅に軽減できます。
例えば、木造非住宅の基準をクリアするための設計やデザインなど、実務的な部分を一貫してアドバイスしてもらえるので安心です。
ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援
非住宅用途の建築物で、木造化・木質化の更なる普及が期待されています。
諸問題を解決して、木造化・木質化を実現するには、「木が得意な実務者メンバー」による仕事が必要不可欠です。
木造非住宅ソリューションズでは、発注者の課題に対して、最適な支援をご提案します。
ハウス・ベース株式会社は、建築分野の木造化・木質化を支援するサービスである「木造非住宅ソリューションズ」を展開しています。
「木造非住宅ソリューションズ」とは、脱炭素社会実現に向けて、建築物の木造化・木質化に関する課題解決に貢献するための実務支援チームです。
◾️テーマ:「(木造化+木質化)✖️α」→木造化・木質化を追求し、更なる付加価値を創出
◾️活動の主旨:木に不慣れな人・会社を、木が得意な人・会社が支援する仕組みの構築
【主なサービス内容】
◾️発注者支援:施主向けに、木造化・木質化への事業計画、依頼先選定、プロジェクトマネジメント等
◾️設計支援 :木造化・木質化プロジェクトの建築計画、デザイン、図面作成、申請等
◾️施工支援 :木造化・木質化プロジェクトの施工者紹介(元請、建て方)、施工者に対しての案件紹介等
◾️事業者支援:メーカー、商社等を対象に、木造化・木質化に関する広報、イベント、販促支援等
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