木造非住宅は意匠性や環境配慮、工期短縮といった大きなメリットを持つ一方、戸建て住宅にはないコスト要素や防耐火・構造計画、長期メンテナンスなど、慎重な検討が必要です。
本コラムでは「コスト管理とローコスト化の工夫」「長期性能とメンテナンス性」「安心・安全を確保する検査体制」の三つの視点から、木造非住宅を成功に導く要点を徹底解説します。
企画段階からメリハリのあるコスト配分を行い、プレカットによる工期短縮と不備の最小化を図る方法や、雨仕舞・防湿対策をはじめとした建物の寿命を延ばす施工・維持管理の秘訣、そして中間検査や第三者検査による多層的な安全確認の重要性など、実務に直結するノウハウをわかりやすくまとめました。
木造ならではの快適性やデザイン性を活かしながら、コスト面でも品質面でも安心できる建築を目指すための実践的ガイドとして、ぜひ参考にしてください。
木造非住宅におけるコスト管理とローコスト化の工夫
木造非住宅に挑戦する多くの工務店や建設会社からは、「木造は魅力的だけれど、コストが高くなりそう」という声を耳にします。
木造非住宅は規模や用途などにより、大空間で特注材での対応を求められる構造設計や、防耐火を実現するための材料費や認定工法の採用など、戸建て住宅にはないコスト要素が増える可能性があるのは事実です。
しかし、設計プロセスと施工計画を工夫すれば、木造のメリットを活かしながらローコスト化を図ることも十分に可能です。
まず、コスト管理の基本として、企画・基本設計の段階から「どの部分にコストをかけ、どの部分を省エネ化・簡略化するか」というメリハリをつけることが重要です。
構造種別の選定もコストに大きく影響するため、部材の調達コストや施工性を考慮して、在来工法・2×4工法・木質ラーメン工法などを使い分けるのも有効です。
具体的な工夫としては、梁や柱の大断面集成材を使用する部分を限定し、その他の箇所は在来材や小断面材を使うなど、要所要所で使用材料を切り替える方法があります。
また、木造は他の構造に比べて工期が短縮できる場合があります。
プレカット工場で木材を加工してから現場に搬入するため、現場作業の効率が高まるのが特徴です。
工期が短ければ人件費や仮設費の削減につながり、結果的に全体コストを抑えられる可能性が高まります。
ただし、設計を綿密に行わずに工事が始まってしまうと、施工途中で変更が発生してしまい、逆にコスト増につながるリスクがあります。
設計段階で精度を上げるほど、ローコスト化につながると考えてください。
ハウス・ベースのように木造非住宅の設計支援を専門に行う企業を活用すると、過去の事例や工法選定のノウハウが得られます。
その結果、コスト試算が早期に行われ、設計変更によるリスクが低減できるため、全体的な工事費もコントロールしやすくなります。
木造の暖かみや設計自由度といったメリットを活かしつつ、上手にローコスト化を図るためには、計画初期からの戦略と調整が欠かせません。
木造非住宅における長期性能とメンテナンス性
木造非住宅を検討する際に懸念されることの一つが、「長期的な耐久性」や「メンテナンス性」です。
木材は湿気やシロアリなどの影響を受けやすいイメージがありますが、適切な設計と施工、そして定期的なメンテナンス体制が整っていれば、鉄骨造やRC造にも劣らない長寿命を期待できるとされています。
実際、木造建築で数百年単位の歴史をもつ神社仏閣や海外の大型木造建築の例もあるように、維持管理次第で木造の寿命は大きく伸びるのです。
まず、建物の耐久性を高めるためには、雨仕舞や防水・防湿対策を徹底することが基本です。
屋根や外壁からの雨水の侵入を防ぎ、基礎や土台周りに十分な防湿層を設けることで、木材が腐朽やシロアリ被害を受けにくい状態をつくり上げます。
また、空調や換気計画も重要で、室内に過度な湿気がこもらないように設計することが、長期性能を維持するポイントです。
特に非住宅用途では、多数の人が出入りするため湿度や室内環境が変動しやすいことを念頭に置いておく必要があります。
また、外装や屋根の定期点検を確実に行い、雨漏りの兆候を早期に発見することが重要です。
メンテナンス性を高めるうえで、設計段階から「点検口」や「メンテナンススペース」を十分に確保しておくことも大切です。
給排水管や電気配線が壁や床下に隠蔽されがちな木造建築では、後から配管漏れや断線が発生した際に点検や補修が困難になる場合があります。
あらかじめ要所要所に点検口を設けたり、メンテナンス経路を確保したりしておくことで、トラブルが起きても迅速に対応できる体制が整うでしょう。
定期点検のポイントや、部材交換が必要となる時期の目安、改修時に留意すべき法規的事項などをまとめておくことで、オーナーや運営者が適切にメンテナンスを実施しやすくなります。
長期性能とメンテナンス性を確保することは、利用者の安全と快適性を担保するだけでなく、建物の資産価値を維持するうえでも非常に重要です。
木造非住宅の安心・安全のための検査体制
木造非住宅の安全性と品質を確保するためには、公的な検査に加えて、設計事務所や工務店、そして第三者機関が連携した多層的な検査体制が欠かせません。
木造非住宅においても中間検査や完了検査が行われますが、非住宅の場合は規模が大きかったり用途が特殊だったりするため、設計段階から施工段階まで一貫して細やかな検証が必要とされます。
まず、法的に義務づけられた検査としては、建築確認申請後の「中間検査」と「完了検査」が挙げられます。
中間検査では、構造部分が設計通りに施工されているかなどがチェックされます。
特に木造では、現場での施工精度が耐火性能や耐震性能に直結しやすいため、中間検査の段階で不備があれば即座に是正策を講じることが重要です。
完了検査に合格しないと建物として使用できない場合もあるため、現場管理者や職人への周知徹底が求められます。
また、安心・安全をさらに高めるには、第三者機関や専門家による自主検査を導入するのも効果的です。
さらに、完工後の定期点検や設備保守も欠かせません。
消防設備については年次点検が義務化されており、消火器や火災報知器、防火シャッターなどが正常に作動するかを定期的に確認する必要があります。
木造だからといって特別に追加の検査が増えるわけではありませんが、耐火被覆材の劣化や木部の腐朽などは外観から判断しづらいため、専門家の視点で建物全体を診断してもらう意義は大きいです。
特に大規模木造建築では、構造材の劣化が進行すると補修範囲が広がりがちなため、早期発見・早期対応が鍵となります。
安心・安全のための検査体制を充実させることで、木造非住宅においても鉄骨造やRC造に劣らない安全性と信頼性を得ることができるでしょう。
ハウス・ベースの設計支援のメリット
「木造非住宅に取り組んでみたいけど、設計面での課題が多すぎて踏み出せない」という声をよく耳にします。
そんなときに頼りになるのが、ハウス・ベースの木造化・木質化支援(設計支援)です。
幅広くカバーする設計支援を活用すれば、初めての非住宅案件でもスムーズに進められるでしょう。
非住宅の木造化には、法規制や耐火性能の確保など、住宅にはない課題が存在します。
ハウス・ベースでは、こうした分野に精通した専門家が設計段階からサポートするため、工務店や建設会社の負担を大幅に軽減できます。
例えば、木造非住宅の基準をクリアするための設計やデザインなど、実務的な部分を一貫してアドバイスしてもらえるので安心です。
ハウス・ベース株式会社の木造化・木質化支援
非住宅用途の建築物で、木造化・木質化の更なる普及が期待されています。
諸問題を解決して、木造化・木質化を実現するには、「木が得意な実務者メンバー」による仕事が必要不可欠です。
木造非住宅ソリューションズでは、発注者の課題に対して、最適な支援をご提案します。
ハウス・ベース株式会社は、建築分野の木造化・木質化を支援するサービスである「木造非住宅ソリューションズ」を展開しています。
「木造非住宅ソリューションズ」とは、脱炭素社会実現に向けて、建築物の木造化・木質化に関する課題解決に貢献するための実務支援チームです。
◾️テーマ:「(木造化+木質化)✖️α」→木造化・木質化を追求し、更なる付加価値を創出
◾️活動の主旨:木に不慣れな人・会社を、木が得意な人・会社が支援する仕組みの構築
【主なサービス内容】
◾️発注者支援:施主向けに、木造化・木質化への事業計画、依頼先選定、プロジェクトマネジメント等
◾️設計支援 :木造化・木質化プロジェクトの建築計画、デザイン、図面作成、申請等
◾️施工支援 :木造化・木質化プロジェクトの施工者紹介(元請、建て方)、施工者に対しての案件紹介等
◾️事業者支援:メーカー、商社等を対象に、木造化・木質化に関する広報、イベント、販促支援等
木造化・木質化で専門家の知見が必要な場合は、ぜひハウス・ベース株式会社までお気軽にお問合せください。